浜松市でも急激に新型コロナウイルス(COVID-19)感染症患者が増加しています。
当院でも当初、新型コロナウイルスの動向が不明なこともあり、運動施設についても制限をかけて運営しておりましたが、現在は十分な感染対策の元、通常運営しております。
理由としては、現在までの様々なデータや経験の蓄積を基に、ゼロリスクは難しいものの限りなくリスクを減らし運営が可能と考えているからです。
なぜそのような結論に至ったのか…
その詳細を書かない限り、皆様の不安を拭えないと思いますので、現状におけるCOVID-19についての私の考え方を記載させて頂きたいと思います。
少し長くなりますが、宜しければ是非ご一読下さい。
1) COVID-19はどうやって移るのか?
感染症は主に
・飛沫感染
・接触感染
によりヒト⇒ヒトへ感染します。病原体によっては空気感染・エアロゾル感染を示しますが、
クラスター(集団感染)は飛沫もしくはエアロゾル感染(三密環境で発生しやすい)
と考えておけば良いと考えます。
2) COVID-19の症状
COVID-19に感染しても半数は無症状と言われています(無症候感染者)
発症した方の症状は様々ですが、発熱・咳・咽頭痛・倦怠感・味覚障害・嗅覚障害が初期症状としては多いといわれています。
大事なことは、普段と違う体調の時には既にCOVID-19を発症している可能性があるということを念頭においてください。
3) COVID-19の感染力
COVID-19は発症前日~有症状期に人に感染させる可能性があります。
ウイルス感染の一般的な考え方として、最も感染力が高いのは、発症早期~発症数日間です(例:インフルエンザウイルス)が、コロナウイルスの怖いところは発症前にも既に感染性が高いところです…
4) PCR検査は有用なのか?
テレビ等のメディアでは、さかんにPCR検査を積極的に実施することがCOVID-19の拡散予防になるような啓蒙がなされています。
一呼吸器内科医として、PCR検査を無差別に実施することには断固反対です。
PCR検査は、感度(真に感染している人を診断できる確率)70%程度であり、特異度(真に陰性である人を陰性と診断できる確率)も100%ではありません。
なので、PCR検査が陰性だとしても、仮に1000人患者がいれば300人陰性と判断されてしまいます。この300人が陰性結果を印籠として通常の日常生活を営めば、感染を拡大させてしまうことが目に見えています。
また、感染調査として無症状の方にPCRを実施すれば、感染率0.1%の集団であれば、99人の偽陽性患者が出てしまい、不必要な隔離を必要としてしまいます。
(下図参照)
5) COVID-19の危険性
下図は日本における年代別死亡数/死亡率です(2020年7月8日現在)
図をみると、60代以上において死亡率が増加していますが、これは実はインフルエンザや細菌性肺炎の死亡率とさほど差がありません。
当然高齢になればなるほどリスクは高まりますが、若年者は大部分が軽症で済んでしまうのです。
6) ここまでのまとめ
前置きが長くなりましたが、1)~5)をまとめると、
・微熱、普段と違う体調(だるさ、普段と違う咳や鼻水、のどの痛み、鼻炎、味覚障害など)の際にはCOVID-19感染初期である可能性がある
・感染初期が最も感染力が高いが、感染前数日で既に人に移す可能性がある。
・三密環境は集団感染(クラスター感染)の危険因子
・PCR検査は万能ではない
・生命の危険性は通常の肺炎やインフルエンザと大差がない
ということです。
なお、COVID-19には
・有効な抗菌薬が存在しない
・ワクチンが存在しない
=自分の生命力や免疫力に掛けるしかない
というところが、不安を増長させる因子となっているのでしょう。
7) じゃあどうすれば良いの??
結論からすると、対策は2点です。
1) 感染しないようにする
2) 感染させないようにする
これはCOVID-19に限らず、すべての感染症に対する原理原則であり、これを徹底するだけなのです。
今までは、風邪をひいても風邪薬を飲んで症状を抑えて働いたり、学校に行ったりするのも当たり前でしたし、インフルエンザ流行期以外はマスクをしなかったですし、手洗いの習慣はあっても手の消毒の習慣を持っていた方はあまりいなかったと思います。
なので、対策の一丁目一番地は上記1)2)を標準予防策により徹底することなのです。
決してPCR検査をいっぱいすることではありません。
8) 感染しない・させないようにするために必要なこと
最も完璧な方法は、誰とも接しないようにすることですが、現実的には不可能です。
社会生活を営みながら感染をできるだけ予防する方法を考えることが理想です。
・無症状で感染しているときに人に感染させない⇒マスクの装着と手洗い・消毒
・ウイルスへの暴露を避ける⇒マスクの装着と手洗い・消毒・ソーシャルディスタンス
・クラスター感染を防ぐ⇒三密環境(密閉・密接・密室)を避ける
・体調が変であるときは積極的に自らを隔離する(最も重要)
・人と接触する機会をなるべく減らす(出張・買い物・面会の頻度の工夫など)
・手が良く触れる場所の掃除(中性洗剤でも十分。アルコールや次亜塩素酸ナトリウムは効果が高いが、次亜塩素酸ナトリウムは取り扱い注意)
…以上を全員が守れれば、感染拡大は相当防げる筈です。
9) 今後の予測される展望
残念ながら、COVID-19が完全に消えてしまうことはないでしょう。
なので、共に生きていくしかないのです。
共に生きるとは「可能な限り感染リスクも減らしつつ社会生活を営み、感染した際には感染予防の徹底と適切な医療の提供を実践する」ということです。
個人的には、現在の最大の問題点は上記の方針が国民全体に伝わっていないことと考えています。現状の不安だらけの世の中を作り出してしまったのは、政府の責任・マスコミの責任も大きいですが、やはり我々一人一人が正しい知識を手に入れて、適切な感染対策を講じること、正しい知識のもと不安を払拭していくことが重要と考えます。
10) 当院のCOVID-19に対する取り組み
・正確な情報を基に医療を実践すること
・患者さんの不安を払拭すること
・困ったときに積極的に助けになれること
が当院の使命と考えています。
・職員の健康管理を徹底していきます(日常生活における感染予防・就業前の体調チェック)
・発熱患者さんでも基本的に診療は断りませんが、感染リスクを十分考慮した上での診療体制を維持します(他患者さんと時間が重ならないようにする、換気の徹底、環境清掃の徹底)*9月以後は院外診察室を設置する予定です。
・運動施設でも利用者様の健康チェックを徹底します
・運動施設内の換気・清掃を徹底します