オミクロン株主流時代におけるワクチンの有効性

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2月から3回目のワクチン接種(ブースター接種)が本格化し、当院でも日曜日を利用し少しでも多くの患者様にワクチンをお届けできるよう、スタッフ一丸努めています。

なお、接種率は現在、以下の通りとなっています。結構急速に進んでいますね。

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3月以後の当院での接種ですが、ファイザーワクチンの不足により、モデルナワクチン接種となります。

3回目は1/2回目の半量での投与となるため、副反応軽減が期待されますが、実際どうなのでしょうか?

その他、3回目のワクチン接種がどれほど有効なのでしょうか?

今後認可される5-11歳のワクチン接種の意義はあるのでしょうか?

 

など、現状で判明しているデータを基に説明したいと思います。

 

1)3回目はファイザーが良い?モデルナが良い?

オミクロン株に対する効果について

発症予防効果

英国健康安全保障庁(UKHSA)の報告によると

ファイザー社、モデルナ社ワクチンの2回目接種後の発症予防効果
 2-4週後は65-70%  25週後までに約10%まで低下
ファイザー社、モデルナ社ワクチン2回接種+追加接種後の発症予防効果
 2-4週後は60-75%  15週以降は25-40%まで低下

と、追加接種により一時的に発症予防効果は高くなりますが、やはり時間がたつと効果は減弱していきます。

入院予防効果

英国健康安全保障庁(UKHSA)の報告によると

‒ 1回目接種4週以降58%
‒ 2回目接種後2-24週64%
‒ 2回目接種25週以降44%
‒ 3回目接種2-4週92%
などのデータがあります。3回目接種後の長期データはまだ不明です。

参考→https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/uploads/11-3%20%282%29.pdf

 

副反応について

3回目はモデルナは1/2回目の半量、ファイザーはそのままの量での投与となるため、モデルナワクチンの副反応軽減が期待されましたが、実際には発熱はモデルナのほうが多そうです(ファイザーで39.8%、モデルナで68.0%と報告)

また、3回目接種では、1/2回目接種と比較し腋窩リンパ節の腫大や腋窩痛が多いようです。

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参考→https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000899481.pdf

 

2)3回目ワクチンはお勧めできるのか?

個人的な結論としては、従来株のスパイク領域をターゲットとし設計されたワクチンですので、オミクロン株に対し現状のワクチンの効果は不十分と思われます。

それでも、重症化リスクのある方=広く考えると40歳以上=は接種を強くお勧めしたいです。

一時的に発症予防効果が上昇しても効果が数か月で減弱してしまうため、もともと入院リスク・重症化リスクの少ない方々(基礎疾患のない40歳未満の方、かつ2回ワクチン接種済の方)は各々の選択で良いと思います。

但し入院・重症化リスクの少ない方々でも、少しでも発症を避けたほうがよいカテゴリー(医療従事者・介護従事者・学校/保育関係者などのエッセンシャルワーカー)の方々は接種を勧めたいと思います。

また、2022年1月以後に新型コロナウイルス感染症に罹患した方々は、現在敢えて3回目のワクチンを接種する意義は乏しいかもしれません。

 

3)5歳~11歳のワクチンはどうすべきか?

オミクロン株が流行する前のデータでは、小児へのワクチン接種により新型コロナウイルスに対する中和抗体価の上昇や90.7%の発症予防効果が確認されていること、安全性に重大な懸念は認められていないことが報告されていました。

しかし、オミクロン株については小児における発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスが十分でなく、かつ小児におけるオミクロン株の感染状況が確定的でないこと(中等症以上の重症化リスクが極めて少ない可能性がある)から、政府は「努力接種」の規定は適応しないこととなりました。

個人的には、現状で11歳未満に積極的に現在流通しているワクチンを推奨する理論は揃っていないため、もう少し様子を見てからで良いのではと考えます。

 

4)現状のまとめ(私見

コロナウイルスは変異を繰り返していくウイルスであり、今後もしかしたらデルタ株以上の毒性、オミクロン株以上の毒性を持つウイルスが出現するかもしれません。

そう考えると、小児にも基礎免疫をつけるために今のうちから2回接種はしておいても損はないのでは?…とも考えられますが、現状では新たに強力な変異ウイルスがでるかどうかも不明です。なので、現状で11歳以下の小児へのワクチン接種は無理をしなくても良いのではと思います。

どうしても、少しでもリスクを減らしたいと考える方は接種してもよいかと思いますが(安全性が高いことは証明されているため)、接種する場合は保護者だけでなくお子様とも十分理解し納得した上での接種が望ましいと考えます。

 

同時に、ローリスク群(40歳未満かつ基礎疾患なし)でも3回目の追加投与は個人の判断で良いのではと考えます。

 

但し、重症化リスクのある方々、エッセンシャルワーカーの方々(特に医療従事者)は少しでも発症リスク・入院リスクを減らすため3回目接種を受けるべきと考えています。